昨晩読んだ本

 

昨日は『六つの星星』を読んだ。

哲学や精神分析、生物学などの専門家6人と作家川上未映子の対談がまとめられた本。

 

この本の最初にまとめられている対談が、精神科医斎藤環との対談なのだが。

彼は何かにつけ、川上未映子の少し病的な家庭環境を分析したがる。

家庭環境について聞き出し、頼んでもいない分析をはじめる。どんな会話も自分が専門とする精神分析の枠組みに回収していく。

 

それってとても失礼なことだと思うのだ。

斎藤環にとっては、川上未映子という個人との対話なんてどうでもいいように見える。

川上未映子のことを知りたいのではなく、川上未映子という事例を通して、自分が足場とする精神分析の有効性を確認したいだけなのだ。

 

この対談が一つ目の対談としてまとめられていたから、なんだかしょっぱなから、とってもしらけてしまった。

 

なんだけど、その次二つ目の対談相手は、生物学者福岡伸一先生だった。

前に『生物と無生物のあいだ』を読んで、とても好きな先生だ。

この方との対談なら、今のイマイチな気分を和らげてくれるに違いない、という淡い期待を抱き、頁をめくる。

 

福岡先生との対談は、お互いが根本的な問いを共有していて、ゆるやかに会話が展開する感じがとても心地よかった。

「実在とは何か」という人類規模の、もっといえば宇宙規模の問いに対して、オカルト的な論理の飛躍に頼ることなく、ゆるやかにでも粘り強く向き合っている。

学問をする人間として、福岡先生のような人になりたい、と思った。